日本酒について

あの香りの正体は何?日本酒に含まれる「香り成分」図鑑|吟醸香から老ね香まで

「日本酒からリンゴのような香りがする」

「なんだかセメダインみたいな匂いがする……」

グラスを傾けたとき、ふとそんな風に感じたことはありませんか?

実は、日本酒に含まれる多彩な香りの裏側には、目には見えない「香り成分」が隠れています。

今回は、華やかな吟醸香の代表格である『カプロン酸エチル』から、熟成の証である『老ね香』の正体まで、主要な7つの成分を分かりやすく解説します。

成分を知ることは、自分の「好き」の正体を知ること。

この記事を読み終える頃には、いつもの一杯が、もっと表情豊かに感じられるはずです。

AROMA COMPONENTS 01 日本酒の華やかさを彩る「吟醸香」

まずは日本酒の「吟醸香」と言われている代表的な2つの成分。

成分 カプロン酸エチル

【説明】華やかなりんご様の香り。
日本酒の「2大吟醸香」の1つ。コンテストに出品されるお酒によく見られる、気品ある華やかさが特徴です。
<代表的な酵母>
きょうかい1801号、M310酵母、秋田今野系など。カプロン酸エチルを大量に生成する高香気酵母として知られています。

RECOMMENDED SAKE

寒紅梅 純米吟醸 山田50% 黒

フルーティーで上品な果実香が特徴的な一本です。
優しい甘みと、クリアで綺麗な余韻が心地よく広がります。「カプロン酸エチル」由来の華やかさを存分に楽しめる、しっかり冷やして飲むのがおすすめの純米吟醸です。

原料米 山田錦
精米歩合 50%
使用酵母 M-310酵母
アルコール分 15度
成分 酢酸イソアミル

【説明】穏やかなバナナの香り。
日本酒の「2大吟醸香」の1つ。カプロン酸エチルに比べると落ち着きがあり、食事との相性が良いのも特徴です。
<代表的な酵母>
きょうかい6号、7号、9号、14号など。古くから愛されるクラシックな酵母が多く、飽きのこない穏やかな香りを生み出します。

RECOMMENDED SAKE

寒紅梅 純米吟醸 山田55% 白

14号酵母(金沢酵母)による、落ち着いたバナナ系の芳香が特徴的な一本です。
穏やかで品のある香りが立ち上がり、後味は心地よく引き締まります。今回のテーマである「酢酸イソアミル」の魅力を体感するのに最適な純米吟醸です。

原料米 山田錦
精米歩合 55%
使用酵母 協会1401号(金沢酵母)
アルコール分 15度

「これらの香りがする日本酒を飲んでみたい!」と思われた方は、ぜひラベルの「使用酵母」をチェックしてみてください。

使用酵母はラベルに書いていないことも多いので、直接プロに相談してみるのも近道です。

お近くの酒屋さんで「リンゴの様な香り(バナナの様な香り)のするお酒はありますか?」と気軽に尋ねてみてくださいね。

吟醸香と呼ばれる成分で有名なのはこの2つですが、お酒を構成する香りは他にもたくさんあります。

たとえば、お酒に奥行きや上品さを与えてくれるこんな成分たちです。

成分 イソアミルアルコール

【説明】マジックインキのようなアルコール感のある香り。
これ単体では力強いアルコール感や「飲みごたえ」を感じさせる成分です。実は、バナナの香り(酢酸イソアミル)の『もと』となる非常に重要な物質でもあります。
<酢酸イソアミルとの関係>
近年の研究では、この成分を多く造る能力と、それを香りに変える力を併せ持った酵母を選ぶことで、より酢酸イソアミルの生成が促進され、より香り高いお酒を造ることができると言われています。

成分 フェネチルアルコール

【説明】上品なバラ・花のような香り。
日本酒の基調となる香りの一つ。派手さはありませんが、お酒に奥行きと上品なニュアンスを与えます。低温でじっくり醸す「吟醸造り」でより引き出される成分です。
<代表的な酵母>
きょうかい1801号や、東京農業大学が分離した「花酵母」が代表格。特にバラの花から分離された「プリンセス・ミチコ酵母」は、この香りを象徴する存在として有名です。

AROMA COMPONENTS 02 「オフフレーバー」(ときどき個性)

日本酒の香りの中には、一般的に「オフフレーバー(欠点)」と呼ばれる成分が存在します。

一般的には、よくない香りを生み出すとされている代表的な成分をご紹介します。

※これらの成分は品質の劣化を示すサインになることが多いですが、そのお酒にしかない「個性」として捉えられることもあります。

成分 ジアセチル

【説明】チーズやヨーグルト様の香り。
乳製品のような独特のニュアンスで、生酛(きもと)系のお酒など、複雑な旨味を持つタイプに奥深い表情を与えます。
<オフフレーバー?個性?>
わずかに含まれる分には「コク」として機能しますが、極端に強く出すぎると「つわり香」と呼ばれ、品質を損なうネガティブな香りとして扱われます。

成分 イソバレルアルデヒド

【説明】焦げたような香り(老ね香)。
「生老ね(なまひね)香」とも呼ばれます。保存状態や熟成の過程で現れる、ナッツやカラメルのような独特の香ばしさ。好みが分かれる部分ではありますが、日本酒の「熟成」として好む方もいらっしゃいます。

成分 酪酸(らくさん)

【説明】いわゆる「火落ち」の香り。
乳酸菌の一種である火落ち菌の繁殖など、お酒が望ましくない変質をしてしまった際に出る特有の香りです。お酒の状態を正しく見極め、最高の状態でお客様へお届けするための重要な指標となる成分です。

CONCLUSION まとめ:成分を知ればお酒はもっと美味しい

いかがでしたでしょうか。普段私たちが感じている「フルーティー」「どっしり」といった感想の裏側には、こうした多様な化学成分のドラマが隠れています。

店主アイコン1
「これはカプロン酸エチルの華やかさかな?」 TASTING NOTES
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「この複雑なニュアンスはジアセチル由来かも」 INSIGHT

このように、ほんの少し成分を意識するだけで、グラスの中の景色は驚くほど豊かに広がります。

もちろん、理屈抜きで「旨い!」と楽しむのが日本酒の醍醐味。

ですが、その「旨さ」の正体を知ることで、自分自身の好みをより深く理解する手がかりになるはずです。

学べば学ぶほど奥深い日本酒。

ぜひ自分なりの楽しみ方を見つけて見てくださいね!

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