海外の方に日本酒をすすめるとき、ラベルの「純米大吟醸」や「本醸造」を英語でどう説明すればいいか、迷った経験はありませんか。種類が多くて難しそうに見えますが、実は分類のしくみはとてもシンプルです。この記事は、日本酒を英語で伝える国際資格「SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL」を持つ、地酒専門店 義侠屋のスタッフが解説します。
特定名称酒と普通酒の違いから、分類を決める2つの軸(純米かどうか・精米歩合)、8種類の一覧、主な名称の英語での伝え方まで、順番にまとめました。読み終えるころには、ラベルの種類を英語で説明できるようになります。難しく見えて、押さえるのはたった2つの軸だけ。基本がわかれば、日本酒選びももっと楽しくなります。
なお、「sake」そのものの発音や、味わい・香りを英語で伝える基本は、シリーズ第1弾の日本酒を英語で説明する基本ガイドで解説しています。あわせてご覧ください。
- 日本酒は「特定名称酒」と「普通酒」に分かれる。ラベルの純米・吟醸などの表示が目印
- 特定名称は「醸造アルコールの有無」と「精米歩合」の2つの軸で決まる
- 純米=Junmai、吟醸=Ginjo、大吟醸=Daiginjoと、英語ではローマ字で通じる
日本酒は「特定名称酒」と「普通酒」に分かれる
日本酒は、大きく特定名称酒と普通酒の2つに分かれます。ラベルに「純米」「吟醸」「本醸造」といった表示があるものが特定名称酒、それがないものが普通酒です。
特定名称酒は、原料や精米歩合(米をどれだけ磨いたか)などの基準を満たしたお酒で、国が定めた「清酒の製法品質表示基準」に沿って名乗ることができます。英語ではspecially designated sakeと表現できます。一方の普通酒は、その基準に当てはまらないお酒で、英語ではfutsu-shu、またはtable sakeと伝えられます。
普通酒は、あくまで「特定名称の基準に当てはまらないお酒」という意味で、品質が劣るという意味ではありません。日常の食卓で親しまれ、旨みのある銘柄もたくさんあります。
見分け方はかんたんです。ラベルに特定名称の表示があるかどうかを見ます。特定名称酒には精米歩合を表示する義務があるので、精米歩合が書かれているかも手がかりになります。
特定名称を決める「2つの軸」|純米かどうかと精米歩合
特定名称酒は8種類ありますが、覚えることは多くありません。たった2つの軸で決まっているからです。この2つさえ押さえれば、名前を見ただけでどんなお酒かおおよそ分かります。
軸1:米だけで造るか|醸造アルコールの有無
1つ目の軸は、醸造アルコール(英語では brewer’s alcohol)を加えているかどうかです。米・米麹・水だけで造るものを「純米系」、そこに醸造アルコールを加えるものを「アル添系」と呼びます。
英語で純米酒を説明するときは、made only from rice(米だけで造られている)と伝えると分かりやすいです。
醸造アルコールに、あまり良い印象を持たない方もいます。かつて戦後の米不足の時代に、量を増やす目的で醸造アルコールを多く加えた「三増酒(三倍増醸酒)」が造られ、質の低い酒も少なくなかったことが背景にあります。ただし、そうしたお酒は2006年の酒税法改正で清酒の定義から外れ、今はほとんど見られません。現在の吟醸酒や本醸造酒では、醸造アルコールは白米重量の10%以下に限られ、増量のためではなく、香りをより華やかにしたり、すっきりとした味わいに整えたりする目的で使われています。
※参考:国税庁「清酒の製法品質表示基準」、SAKE Streetほか。三増酒は2006年(平成18年)の酒税法改正で清酒の定義から除外されました。
軸2:米をどれだけ磨くか|精米歩合
2つ目の軸は、精米歩合(英語では rice-polishing ratio)です。米の外側を削り、中心部だけを使うほど、雑味の少ないすっきりした味わいになります。精米歩合60%以下で「吟醸」、50%以下で「大吟醸」と名乗れます。数字が小さいほど、よく磨いているという意味です。
【一覧】特定名称酒8種類の分類チャート
2つの軸をもとに、特定名称酒は8種類に分かれます。純米系(醸造アルコールなし)とアル添系(醸造アルコールあり)に分けて、一覧にまとめました。
| 特定名称 | 醸造アルコール | 精米歩合 |
|---|---|---|
| 純米系(米・米麹・水だけ) | ||
| 純米酒 Junmai-shu | なし | 規定なし |
| 特別純米酒 Tokubetsu junmai-shu | なし | 60%以下、または特別な製法 |
| 純米吟醸酒 Junmai ginjo-shu | なし | 60%以下+吟醸造り |
| 純米大吟醸酒 Junmai daiginjo-shu | なし | 50%以下+吟醸造り |
| アル添系(+醸造アルコール) | ||
| 本醸造酒 Honjozo-shu | あり | 70%以下 |
| 特別本醸造酒 Tokubetsu honjozo-shu | あり | 60%以下、または特別な製法 |
| 吟醸酒 Ginjo-shu | あり | 60%以下+吟醸造り |
| 大吟醸酒 Daiginjo-shu | あり | 50%以下+吟醸造り |
※出典:国税庁「清酒の製法品質表示基準」。英語表記はSAKE DIPLOMA INTERNATIONAL教本の分類表を参考。いずれもこうじ米の使用割合15%以上が条件です。
表を見ると、名前のしくみが見えてきます。「純米」が付けば醸造アルコールなし、付かなければアル添系。そして「吟醸」は60%以下、「大吟醸」は50%以下。この2つの組み合わせで、8種類すべてが説明できます。
少しややこしいのですが、精米歩合の基準があるのは純米酒以外の7種類で、純米酒だけは精米歩合の要件がありません。もともとは「70%以下」という基準がありましたが、2004年の基準改正で撤廃されました。純米酒は「米・米麹・水だけで造る」ことが条件で、磨き具合は問われないと覚えておくと分かりやすいです。
主な名称を英語で説明する|Junmai・Ginjo・Daiginjo
特定名称は、英語でもJunmai、Ginjo、Daiginjoとローマ字のまま通じることがほとんどです。そのうえで、一言の説明を添えると、より親切に伝わります。主な4つを見ていきましょう。
米・米麹・水だけで造り、醸造アルコールを加えないお酒。米の旨みやコクが感じられます。
Made only from rice — rich and full of umami.
精米歩合60%以下の米を、低温でゆっくり発酵させたお酒。華やかな香り(吟醸香)が特徴です。
Rice polished to 60% or less — light and aromatic.
精米歩合50%以下まで磨いたお酒。吟醸よりさらに繊細で、香りも味わいも上品です。
Rice polished to 50% or less — delicate and refined.
少量の醸造アルコールを加えたお酒。すっきり軽やかで、食中酒としても親しまれています。
With a little added alcohol — light and smooth.
「純米」と「吟醸/大吟醸」は組み合わせられます。たとえば純米大吟醸は、「醸造アルコールを加えず(純米)、50%以下まで磨いた(大吟醸)お酒」という意味です。英語なら Junmai Daiginjo — made only from rice, polished to 50% or less. と説明できます。
まとめ|ラベルの種類を英語で伝えるコツ
特定名称の分類は、「純米かどうか」と「精米歩合」の2つの軸さえ押さえれば、難しくありません。「純米」が付けば米だけ、「吟醸」は60%以下、「大吟醸」は50%以下。この基本を知っておくと、ラベルを見ただけでどんなお酒かが分かり、英語でも Junmai、Ginjo、Daiginjo と自信を持って説明できます。
義侠屋では、全国の蔵元から仕入れた個性豊かな地酒を、純米から大吟醸まで幅広く取り扱っています。「海外の方へのお土産にどれがいい?」「この銘柄はどんな種類?」といったご相談も歓迎していますので、お気軽にお立ち寄りください。
「sake」の発音や、香り・味わいを英語で伝えるフレーズ、そのまま使える例文は、シリーズ第1弾の【保存版】日本酒を英語で説明!sakeの発音・味わいの伝え方と例文でまとめています。
日本酒の種類に関するよくある質問(FAQ)
Q. 精米歩合が低いほど良いお酒ですか。
一概にそうとは言えません。よく磨いた米で造る大吟醸は華やかで繊細ですが、磨きの少ない純米酒には米の旨みやコクがあります。どちらが上ということではなく、味わいの方向性の違いです。好みや料理に合わせて選ぶのがおすすめです。
Q. 普通酒は質の低いお酒ですか。
いいえ。特定名称酒の基準に当てはまらないお酒が普通酒(futsu-shu)で、質が低いという意味ではありません。日常酒として広く親しまれ、旨みのある銘柄も多くあります。
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